きれいな恋をしよう
 ひとつ下のこの妹は吹奏楽部に所属していて、それなりにはりきっているようだった。
 もうすぐコンクールが近いらしく、このところ生活パターンが合わないのか同じ家に住んでいながらひさしぶり、という感じだった。

 とにかく、午後練ということは午前中はひまなのかもしれない。
 いままで朝から1日あったのが、なんかの都合で半日休みになったのだろう。

 だから夜更かししてるのか。なるほどね。

「まだ400ミリ以上は残ってるぞ」

「コップ1杯ぶん減ってるんでしょ?」

「あんまり飲んでないからな。ほんとうに」

「でもほら、気持ちの上でちがうじゃない、いちどあいたのとそうでないのとは」

 負けた、ていうか面倒くさく成長したものだ。

「わかった。明日同じの買ってやる」

「ペプシがいい」

「オーケー」

「ネックスね」

「……」

 おれはこのひとくちでコップの中身を飲み干した。
 底のほうは、氷が溶けてなんだかべつの味になっていた。
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