【完】幼なじみのあいつ
「……そうなってたら、お前を嫁さんにしてやるのにな?」
「前は俺の嫁になるなんて想像出来ないって、言ったじゃん…」
保健室で言った翔ちゃんの言葉、まだ覚えているんだからね!
その時言われた事をまだ根に持っていた私は、恨めしげに翔ちゃんを見る。
それなのに翔ちゃんはまるで全てを受け止めると言わんばかりに、優しげに笑みを作った。
まさかそんな顔をされるとは思ってなかった私は、お目々がパチパチと瞬く。
私の肩に乗せていた翔ちゃんの手が、ゆっくりと離れて行く。
少々名残惜しいな…、と思ったところで今度は私の背に腕を回してきた。
翔ちゃんに抱きしめられたのだ---
え、翔ちゃん?
何で抱きしめてくるの?
いきなりの出来事にどうしたらよいか分からなくて、ただされるがまま…。
今、私は…、
翔ちゃんに、抱きしめられているんだよね?
夢にまでみたこの出来事に、胸がツンと痛んだ。
このまま…、
時が止まればいいのに---
何故、翔ちゃんが私を抱きしめているのかは分からない。
もしかしたら、からかっているのかもしれない。
それでも翔ちゃんの香りと部活で掻いた汗臭いニオイに、私の心が満たされていく。