【完】幼なじみのあいつ


頭を優しく撫でる感触に、意識が浮上する。


その撫で方があまりにも優しくて、心地良い---




しばらくするとその手が今度は私の頬に触れ、そしてそのままゆっくりと遠慮がちに唇をなで上げてきた。




くすぐったい---


身じろぎすると、私に触れていた指先が離れてしまった。





まだ…、


触れていて欲しいのに…。



そう願ってもその指先はもう、私に触れてはくれなかった。



 ・



意識がゆっくりとまた闇に溶け込みそうになった時、近づく気配に気付き踏みとどまる。




なに?


私の顔に微かな風を感じ、ピクンと瞼が揺れる。




不思議に思っていたところで柔らかく温かい何かが、私の唇に戸惑いがちに包んできた。




………もしかして…、


………キス?



そこではっと意識が戻ってくる。




分からない…、


これがキスなのか…、正直よく分からなかった。



だって、キスなんてした事がないから…。




唇を包んでいた柔らかいものは、私からすぐ離れていく。


何だったのか確認しようと瞳をゆっくり開けていった…と同時に、私の傍にいた誰かが静かな足音をたてながら遠ざかってしまった。




ガラッ…と扉の開く音がしたと思ったら、そのまま人の気配が消える。



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