【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~
目の前には、可愛い早紀ちゃん。
しかし今日に限って、全く可愛いと感じないのは何故なんだろうか?
頭の片隅ではずっと、鈴の事ばかりを考えている自分。
亮平と一緒にいる鈴が、心配で堪らなかった。
「ごめんっ!今日はちょっと、早紀ちゃん事送れない」
俺のこの言葉を聞いた瞬間、掴まれていた腕の力が少し強くなった。
きっと驚いたから、腕を掴む力が強くなってしまったのだろう。
いつもの俺だったらこの後、早紀ちゃんを自宅まで送るのだから---
「わ、分かった」
無理に作ったような笑みを俺に向け、早紀ちゃんは俺に向かって手を振る。
そして俺に背を向けた早紀ちゃんは、トボトボと歩き出した。
きっとショックだったんだろうな…、とは思うけどしょうがない。
「気をつけて」
早紀ちゃんの背後に向かってそう言うと、振り返った早紀ちゃんはニッコリ笑ってまた手を振ってきた。
一つ一つの動作全てが、早紀ちゃんは凄く可愛い。
でもやっぱり違うんだよなぁ。
いつもは感じるドキドキ感が今は全くなく、俺の気持ちは妙に冷めている。
早紀ちゃんが見えなくなるまで見送った俺は、ダッシュで自分の家に向かって走った。
一端自分の家の玄関に鞄をブン投げ、次にそれぞれの家の前に鞄を置いた。
よし、お仕事終了ー。
鈴達のところまで戻るか。
しばらく歩いていると、鈴と亮平の声が聞こえてきた。
聞えてくるその声から察するに、一向にこちらに向かって歩いてくる様子がない。
何をやっているんだ?