【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~
視線をそのままにそう呟けば、亮平からは幼なじみだからと言ってそんな事を言う資格はないと言わてしまった。
そんな事は分かっている。
でもこれ以上何も言えなくて、徐に空を見上げた。
街灯の明かりのもとに虫達が集まっているのを、ただボンヤリと見る。
スゲェ、居辛い。
何も言わず、俺はそのまま二人の前から立ち去る事にした。
本当は鈴を連れ出したかったけれど、そんな資格はないのだと自分に言い聞かせる。
俺…、
何やってんだろう?
このわけの分からない自分の気持ちに、手を拱いていた。
二人を見ていると俺は苦しくなる。
それは俺にも分かっている。
そこから導き出される答え---
俺は、鈴が好きなのだろうか?
今まで幼なじみだったのに今更、鈴が好きだと思うなんて。
ただ…、
そう思うとなんだかしっくりときた。
俺は立ち止まり夜空を見上げた。
生暖かい風と一緒に運んできた匂いは、どこかの家の夕飯の匂い。
そして夜空にはポツポツと星が瞬いていて、三日月がくっきりと金星と寄り添っているのが視界に入った。
俺は、鈴が好きだ---
この時始めて、俺は自分の気持ちを自覚した。