【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~
新幹線を降りた俺達は京都駅に止まっていたバスに乗り込み一路、奈良公園へと向かう。
鹿の多さに圧倒されながら同じ班の、俺と亮平・鈴と鈴の友達の香織と香織の彼氏である聡・美香の6人で昼飯を食べた。
少しばかりムシムシする六月のこの湿気に、気だるげにシャツのボタンを外していたところで俺の名前を呼ぶ声が聞こえ視線をそいつに向けた。
今現在、俺の彼女である早紀ちゃんが目の前にいた。
「ね、翔ちゃん。時間になるまで2人で回らない?」
「ちょっと!勝手な事言わないでよね。今は班行動の時間だよ?」
早紀ちゃんの言葉に、畳み掛けるように言う美香ちゃん。
俺の前ではお目々キラキラにさせながら上目遣いで見るくせに、早紀ちゃんに見せる表情は肉食獣を彷彿とさせるほど怖くて少し引く---
「…ご、ごめんなさい。班行動してない人、結構いるからいいかな?って思ったんだけど……。翔ちゃん…、ダメかな?」
その言葉を聞いてふと思った。
これって早紀ちゃんに別れを告げるチャンスだな---
亮平からも班から抜けて良いと言われたし、俺は自分の荷物を手に持って立ち上がる。