【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~


「行かないで?翔君…」


「…ごめんね、美香ちゃん。ちょっと行って来る」



俺の袖を引っ張る美香ちゃんの手を放させ、早紀ちゃんと歩く。




ふと鈴に目をやると、心配そうに俺を見ていた事に気付いた。


気になったが、それよりも早紀ちゃんとの事が先決だと思い直し視線を鈴から外す。




少し湿気はあるもののどこか穏やかな風が心地よく、御飯も食べたばかりだからか眠くなってくる。


しかしこれから早紀ちゃんに言わなければならない事があるのだから、気をシッカリもたなくてはと前を見据え軽く頭を振った。




「どうしたの、翔ちゃん?」


早紀ちゃんの手が俺の腕を掴み、首を傾けながら聞いてくる。


ちょっと眠くて…、と言うと納得したように早紀ちゃんが笑った。



その表情がもうすぐ崩れてしまうのかと思うと少し胸が痛かったが、俺の気持ちがもう早紀ちゃんにはないのだからそれはしょうがない事だよな。





少し歩いていたら人気のない場所に、ポツンとベンチが置いてあった。




話をするには、絶好の場所だ。


傍には木がいくつかあって、木陰を作っている。





「ここに座らない?」


俺の言葉に早紀ちゃんは頷き、俺が座るのを確認してからそっと俺の隣に腰掛けた。


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