【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~


「イ……、ヤ………ッ」



小さな呟きと共に早紀ちゃんの目からは、涙がポロポロと零れてくる。


それに驚いて思わず早紀ちゃんへと手を伸ばしたが、すぐに引っ込めた。




ゴメン、早紀ちゃん---


今は優しく出来ないや。



引っ込めた手をギュッと握り締め、なにも出来ない俺は早紀ちゃんの泣いている姿をジッと見つめた。




突然、俺に抱きついた早紀ちゃんが胸に顔を埋め嗚咽を漏らす。


そんな早紀ちゃんを見ながら、今までの二人の思い出が走馬灯のように流れて行った。




最初の場面は、バレンタインの日だ。


あの日は早紀ちゃんが俺に告白してくれて、スッゲー嬉しかったな。



頬を染めた早紀ちゃんが、可愛いピンク色の包装紙に赤いリボンをラッピングしたチョコを俺に手渡してきた。


俺は嬉しくて、早紀ちゃんを思わず抱きしめたっけ---




次は初めてキスした日。


あれは、ホワイトデーの日だった。



チョコのお返しに買っていた青いストライプのラッピングに包まれたお菓子を手渡しながら、そっと早紀ちゃんにキスして抱きしめたんだ。



その時の早紀ちゃんは嬉しそうに泣きながら俺を抱きしめ返してくれて、俺…、このまま死んでもいいと思えるくらい幸せすぎて胸が一杯になった事を今でも覚えている。




一緒に帰る時は必ず公園に立ち寄り、ベンチで二人寄り添いながらたくさん話をした。


そして帰り際にキス。



まだ離れがたくて、しばらく抱き合ったっけ。


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