【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~
その姿に、胸が一瞬痛んだ。
あの天使は俺のもとには来ないのだろう…、そう思ったらスッゲー胸が痛くなったんだ。
ズキズキする。
腕を伸ばし鈴を捕まえようとしたが、俺から距離が大分ある。
俺はもう、鈴を捕まえる事は出来ないのだろうか?
感傷に浸れたのは一瞬で、鈴はボールをシュートしたと同時に落下していくのが見えた。
「……っ!」
なにも考えず無我夢中で鈴を追いかけるように走った俺は、……そのまま鈴の下敷きとなった。
あぁ、俺。
鈴を助けられたのか?
この時、俺の天使が俺の下に来てくれたように感じてとても嬉しかった。
「しょ、翔ちゃん?」
「って…。お前ちょい重すぎ。少し痩せれば?」
俺を下敷きにしているのに気付いた鈴が、驚いて俺の名を呼ぶ。
その時、俺の名前を呼んだ鈴に嬉しくなって身体の傷みなんて吹っ飛んだ。
何でだろう?
今の俺は、鈴が俺の名前を呼んでくれたと言うそれだけの事が本当に嬉しかったんだ。
そんな自分自身にテレて、つい鈴にからかった言い方をしてしまった。
俺を見上げる鈴はキョトンとしていて、さっきまでの天使が嘘のようだ。