かぐやの月
銀司は椿の手を放すと、かぐやの隣へ行き肩に手をかけた。


「余計なことしないっ・・・?!」


かぐやが言い終わらないうちにその口が銀司の唇で塞がれた。


「いいか、こいつに妙なことしたやつは俺が黙っちゃいないからな!」


あまりの展開にかぐやはあっけにとられ、椿は短剣を床に落とした。


周りの女ばかりが悲鳴を上げた。



銀司はかぐやの腕をグイッとつかんで大股でずんずん歩いて外へ出た。


「ちょっ・・・」


かぐやが銀司の横顔をやっとの思いで見上げると、


あれだけ自分から大胆なことをしておきながら、顔が真っ赤になっていた。


「あはは」


「笑うなっ!え? おまえ笑ってるのか? 笑えよ、好きなだけ笑え」


かぐやの小鳥のさえずりのような笑い声が銀司の心をくすぐった。


かぐやが笑った。


銀司は自分の馬鹿げた行為がかぐやの笑いで価値あるものになったことが嬉しかった。






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