禁断のプロポーズ
『コンパに行ってきます』
玄関先でそのメールを見た夏目は、見間違いかな、と一瞬思った。
結婚しようかと言うのに、その結婚相手の男に、こういうメールを堂々と送ってくるというのはどうなんだ。
いや、なにも疚しくないから、送ってくるのだろうか?
……あの女、読めないからな。
ミステリアス、と言えば聞こえがいいが。
なにを考えているのかよくわからないし。
まあ、そういうところが気になっているのは確かだが。
危険な美女というには、どうにも間が抜けている。
少し迷って、
『早く帰れよ』
と打ち返す。
『了解でーすっ』
と陽気な返事が絵文字つきで、戻ってきた。
こいつ、自分の置かれている状況、わかってないな。
やれやれ、と夏目は鞄を居間のソファに置いた。
しんとして、人気がない。
つい、この間まで、これで当たり前だったのに、なにやら寂しい感じがした。
食べて帰るか、コンビニでなにか買ってくればよかった、と思う。
だが、今更、外に出るのは、なにか作るよりも面倒臭く、夏目は仕方なく、着替えて台所に向かった。
ぎしり、と軋む廊下で振り返る。
静かな未咲の部屋と、その前の縁側を眺め、今日は、ばあさんも出てこないのか、と思ってしまった。
幽霊にまですがるようじゃな、と思いながら、夏目は暗がりで冷蔵庫を開けた。