禁断のプロポーズ
 


 最初に行った店で、克己は灰原の隣に座った。

 しばらく、彼女をなにかと持ち上げながら、話していたが、やがて、ごく自然に、隣に居た男を紹介する。

 克己はトイレに立ち、そのまま、灰原は男と話し出した。

 男は灰原を本気で褒めちぎっており、灰原もまんざらでもなさそうだった。

「な、うまく行ったろ?」

 ふいに横で声がした。

 克己はいつの間にか、未咲の隣に座っていた。

「いやあ、どうですかね?

 いい気分にさせられて、今は楽しく話してるけど、家に帰って、冷静になったら思いますよ。

 あら、私、水沢さんとあんまり話してなかったわって」

「家に帰らなきゃいい」

「は?」

 腕を組んで座る克己は、顎で男を示し、
「あいつには、出来るなら、今日は灰原は家に帰らせるなと言ってある」
と言う。

 本当に困った人だ、と思いながら、なんとなく、スマホを見た。

 もう何度か見た、『早く帰れ』の文字をまた確認してしまう。

「なに? 夏目?」
と克己が覗き込んで訊いてくる。

「課長じゃなかったら、問題でしょう?」
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