禁断のプロポーズ
 


「水沢さん、お水です」
と夏目が居間のソファに座る克己にグラスを渡していた。

「ありがとう、ありがとう、夏目くん」
とまるで選挙で勝った人のように、克己は夏目を抱いて、その背を叩く。

 なんなんだろうな、この人たち、と思いながら、未咲が自力で水を飲みに行こうとすると、夏目が、
「ちょっと来い」
と言う。

「いやいやいやいや。

 あのっ、水飲んで、顔でも洗ってきまーすっ」
と怒られそうな気配に逃げた。

 まだ化粧を落としていないので、水洗いなど出来ないのだが。

 台所で、水を汲んでいると、いきなり、後ろ頭を押さえつけられ、水に頭を突っ込んだ。

「課長っ」

 雫を滴らせ、振り返ると、夏目が冷ややかに見て言う。

「なにしにコンパに行った」

「いやー、灰原さんが、克己さんと呑みたいからセッティングしろって」

「その水沢さんは、此処に居るじゃないか」

「企画事業の人に灰原さんを押しつけて、帰ってきちゃったんですよー」

「企画事業?」
と顔をしかめる。

 夏目の居る部署だからだろう。
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