禁断のプロポーズ
「そうなんですか。
 『彼女』の日記を探しに来られたのかと思いました」

「へえ。
 日記なんてあったんだ?」

 それ、今、何処にあるの? と克己は訊いてくる。

「フランスの貸金庫にあって、開くと爆発します」

「君はさ。
 いつも、何処までが本気なの?」

 笑ったあとで、足を止めた克己がこちらを振り返り言う。

「なんで僕がその存在しているかも知らない日記を探してるとか思うわけ?」

「いえ、カマかけただけですよ。

 日記の存在はご存知でしたか?」

「いや、なにかあるんだろうなとは思ってたけど。

 結局、君は彼女のなんなの?」

「……妹ですよ」

 へえ、と克己は繰り返す。

「日記どころか、妹が居たってのも、初耳なんだけど」

「そうでしょうね」

「ほんとに君は得体が知れないねえ」

「水沢さんほどじゃないですよ。
 
 本当は何者なんですか?」

「……何者でもないよ。

 僕は何者でもない」

 月が克己の淡い色の髪を透かすように照らしていた。

 未咲の肩を掴んだ克己は、側の太い柱に手をつき、顔を近づけてくる。
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