禁断のプロポーズ
「水沢さん、昔、第二の誰かに騙されたんですか?」

「ほんっとうに君は傷口えぐるね〜」
と額に額を近づけ、克己は睨んでみせた。

「あいつらなんて、よりいい男が手に入りそうになったら、前のは、すぐポイだよ」

「……魚、私のもあげますよ、水沢さん」
と思わず、肩を叩くと、

「慰められると、余計虚しくなるから、やめてくれる?」
と言う。

「ともかく、君と、君のおねえちゃんと、その日記とやらに興味があるのは、個人的な理由からじゃないよ」

「誰かに頼まれたってことですか?」

「いや、そうじゃない。

 言い方、悪かったかな。

 恋愛感情とかそういったものを含んだ理由じゃないと言いたかったんだけど。

 ああでも、今、君を入れたのは間違いだね」

「えっ」

「最初に見たときは、美人だから、僕の範疇じゃないと思ったんだけど、そうでもない……」

「魚、焼けましたよ」

 いつの間か現れた夏目が、克己の耳を引っ張る。

「魚、焼けましたよ」
と無表情に繰り返す。

「いたた。
 お前、それが先輩に対する態度か」

「課長ですから、俺」

「うわーっ。
 普段、それ、言われるの、嫌がるくせにっ」

 あ、やっぱ、嫌なんだ……と苦笑いしながら、見ていた。
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