禁断のプロポーズ
見たこともない夏目のおばあさんが、縁側をゴムまりのように跳ねては、行ったり来たりしている夢を見ていた。
ゴムまりは跳びながら、障子を破らずに、部屋の中に入ってくる。
そのまま、胸にどすん、と乗った。
うっ、と思って目を覚ます。
部屋の中に影があって、悲鳴を上げそうになったが、すぐさま、口を塞がれた。
大きな手だ。
その大きさのせいか、匂いのせいか、夏目だとわかった。
「なんですか、もう〜っ」
と抑えた声で言うと、夏目は、そっと手を離し、
「水沢さんが侵入してないかと思って、確認にな」
と言う。
「侵入してるのは、貴方ですよっ、もう〜っ。
ゴムまりみたいに跳ねるおばあさんの夢見てたのに」
「だったら、起こしてやってよかったろうが」
「今、私の上になにか落としませんでしたか?」
「いや、俺がお前に、つまづいただけだ」
と言う夏目は何故か真横に正座している。
障子から差し込む月明かりを受けたその姿に、
「……なんですか」
と呼びかけると、
「いや、ちょっと見張っていようかと」
と言った。
「なにをですか。
今、此処に日記はありません。
水沢さんが入ってきても、平気ですよ」
「おい、お前」
と言われ、はい? と見る。