禁断のプロポーズ
 本当は自分も出た方がいいのではないかと時計を見て思ったが。

 克己は一緒に出社するような事態を避けるために、先に出るのかもと思い、遠慮した。

 玄関先で、二人で克己を見送ると、
「なんだか新婚夫婦の新居に遊びに来て、見送られてるみたいだね。
 じゃあ、ありがとう」
と手を挙げ、行ってしまう。

 すりガラスの戸が閉まり、スーツを着た克己の影が、遠ざかっていく。

 通りに出て、曲がったらしく、そのぼんやりとした人影が見えなくなったので、自分も支度しに行こうと思ったとき、夏目に強く腕を掴まれた。

「なっ、なんなんですかっ」
と身を引くと、少しこちらの顔を見たあとで、

「いや、別に」
と手を離して、行ってしまう。

 ……本当によくわからない人だ、と思いながら、その後ろ姿を見送った。
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