禁断のプロポーズ
「単に、そういう想定もできるってことですよ。

 あらゆるパターンを考えて、動かないと」
と言うと、克己は、

「君はさあ、秘書に向いてないよね」
と言い出す。

「まあ、向いてませんよね。

 でも、あれからは、なにもひっくり返してないですよ」

 そういえば、あのとき、克己たちも一緒に謝ってくれたな、と申し訳なく思い出していると、

「いや、そういう意味じゃないよ。

 君は秘書より、上に立つ方が向いてる思考の持ち主だよね。

 もしかしたら、夏目よりも、広瀬専務よりも」
と言ったあとで、

「じゃあ、ご馳走様」
と紙コップをきちんと始末して、克己は帰っていった。

 そのとき、
「ちょっと」
といきなり、肩を掴まれ、ひいっ、と未咲は振り返る。

 ゴムまりおばあちゃんを思い出し、なんの背後霊かと思ったのだ。

 だが、そこにはおばあちゃんには程遠い、朝から華やかな桜が立っていた。

「あ、おはようごどいます」
と言うと、桜は顔を近づけ、小声で叫ぶ。

「あんた、結局、コンパに私を誘わなかったわね〜」

 何処の怨霊かという口調で桜は言った。

「いやー、すみません。
 水沢さんが、誘うなって言うもんですから」

「なんでよ」

「あれっ?
 桜さん、行きたかったんですか?」
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