禁断のプロポーズ
「違うわよ。
 でも、あんたが来いって言うから、ちょっと待ってたのよ」

「あっ、そうだったんですかっ。
 すみませんっ。

 あまり乗り気でなかったようなので、敢えて言わなかったんですが」

 実は、とそこで声を落とし、
「水沢さんが、桜さんを連れていくと、男の人がみんな桜さんの方に行っちゃって、灰原さんの顔を潰すから、連れていくなと言うので」
と言うと、桜は満更でもなさそうだった。

「そうなの。
 ところで、水沢さん、スーツの感じがいつもと違わない?」

「さすがですね。
 意外とサイズぴったりなのに」

「え?」

「水沢さん、夕べ、うちに泊まったんですよ」

「は?
 あんた、いつ水沢さんに乗り換えたの?」

「なに言ってんですか。

 うちには、課長が居るじゃないですか。

 っていうか,あれ、元々、課長のうちですけどね」

「ああ、あれ、遠崎のスーツなの。

 どうりで、質実剛健って感じだと思った。

 水沢さんは、いつも、もっと繊細な感じよね」

「へえ。
 すごいですね。

 私は全部、ひとまとめに、暗い色のスーツ、としか認識できないんですが」

「あんた、秘書向いてないわね」

 今日、二回目のその台詞を聞いた。
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