禁断のプロポーズ
 一瞬、桜にすべてを話してしまおうかと思った。

 彼女は信頼に足る人物だと一緒に居て、よくわかった。

 だが、それと、桜が彼女の自殺の原因になっているかどうか。

 それを知って、隠蔽していないかどうかというのは、また、別問題だ。

「あんたさー、明日から睨まれるわよ。

 さっき、結構みんな見てたから」

「既に睨まれてますよ。

 いきなり、広瀬専務の秘書になったり、平山さんに気に入られていると思われてたりで」
と言うと、

「気に入ってるわけじゃないけど。

 他の連中より、やりやすいのは確かね。

 とろくさいけど、飲み込みは早いし」

 ただ、頭に動作がついていってないわよね、と言われる。

「体育会系の人間じゃないもので」

「私も違うって言ってるでしょ」
と桜は言うが、部活のキャプテンのノリなのだが。

「遠崎課長にプロポーズして、睨まれるってことは、課長は人気があるんですか?」

「あんた、なに間抜けたこと言ってるのよ。

 見たらわかるでしょ。

 広瀬専務は繊細なインテリ系って感じだけど、遠崎は体格もがっしりしてて、男っぽいイケメンよね。

 落ち着いてて、頼り甲斐がある感じじゃない」

 今、広瀬専務の話を引き合いに出す必要があったかな、と思ったが、語りたかったのだろう。

 そんなときの桜の表情はなんだか可愛い。
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