禁断のプロポーズ
「でも、今、あの男が人気沸騰中なのは、会長の隠し子だってわかったからよ」

「そうなんですか?」

 当たり前じゃないの、と桜は力説する。

「ただのイケメンと金と地位のついたイケメンじゃ全然違うわよ」

「うーん。
 じゃ、桜さん、広瀬専務が出世街道から外れたら、どうするんですか?」

 えっ、と桜はつまる。

 そんな想定はしていなかったらしい。

「今、社内では、後継者を絞るため、社長、会長の親族が或る程度の地位につれられ、試されています。

 はっきり言って、ええっ、この人がこんな役職ついちゃっていいの? って、人も居ますよね」

 桜は黙る。

 立場上、迂闊なことは言えないからだろう。

 何処から、もれるかわからないし。

 今もこの会話に誰が聞き耳を立てている人間がいるかもしれない。

 何処かに盗聴器があるかもしれない。

 もちろん、我々のくだらない会話を聞くためではない。

 役員に関する情報をいち早く抜くためだ。

 ま、普段のしょうもない話をうっかり聞いてしまったら、時間の無駄だとすぐさまスイッチを切られることだろうが。

「そんな人間をいつまでも、高い地位につけとくなんて、出来ないと思います。

 個人経営の小さな会社じゃないんですから。

 桜さんはよくわかってらっしゃるでしょうけど」

 これと言う人間以外は、すぐに容赦なく振り落とされる。

 恐らく、そのための人事異動だったのだ。
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