禁断のプロポーズ
 


 昼食後、外から帰ってきた未咲がエレベータに乗ると、智久も同じエレベーターに乗っていた。

 専務に一緒に乗られて、他の社員は、少し気詰まりそうだった。

 もし、夏目が役員になったら、嫌いそうなシチュエーションだが、智久は気にしている風にもなかった。

 当たり前だが、みな次々と己のフロアで降りていくので、最後には、また智久と二人きりになっていた。

「なに見てるんだ?」

 相変わらず、前を見たまま、智久が問う。

「スクラッチ買ったんですよ」
と言うと、鼻で笑った。

 ……じゃあ、訊くな。

 大事そうに持っている未咲に、
「眺めてないで、さっさと削ったらどうだ?」
と言ってくる。

「いやー、しばらく削りません。

 当たってるかなーと思ってる間が幸せなので」

 そんなもの買ったこともないのか。

「当たって、上限幾らなんだ?」
と訊いてくるので、

「五十万ですかね」
と言うと、再び、鼻で笑って、先に降りていってしまった。

 じゃあ、訊くなよっ、と思っていると、エレベーターの外から智久の声が聞こえてきた。

「早く降りろっ。
 俺に押させるなと何度言ったらわかるんだ!」

 外で開くボタンを押してくれているらしい智久が顔を覗けてわめく。

 いや、わざわざ押しててくれなくてもいいんだが。

 意外に律儀な人だな、と思いながら、未咲はまだスクラッチを眺めながら、エレペーターを降りた。
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