禁断のプロポーズ
「なにやってんの?」
給湯室でスクラッチを眺めていると、桜が訊いてくる。
「いや、当たらないかなーと思って」
「やだ。
まだ削ってなかったの?
私、もう削ったわよ、二百円が一枚。
って、あんた、それ一枚しか買ってなかったんだっけ?」
早く削りなさいよ、と言う桜に、
「当たってるかなーと思ってる間が幸せなんですって。
どうせ、当たって二百円なんですから」
と言うと、
「一枚買って、二百円なら、かなり率がいいわよ。
貸しなさい。
削ってあげるから」
と手を出してくる。
「嫌ですよーっ。
なんで私の楽しみを奪うんですかっ」
「いいじゃないの。
削ってハズレてたら、また、次を買えば?
なんか近くに削ってないのがあると、イライラするのよ」
「見なきゃいいじゃないですかっ。
あっ」
桜の手からスクラッチを逃した弾みに、冷蔵庫の角に当たって少し削れてしまう。
「あーっ。
もう桜さんったらっ」
「……それ、私のせい?」
あんたが間抜けなだけじゃ、と言ったあとで、
「悪かったわよ。
新しいの買ってあげるから、それ、もう、削っちゃいなさいよ」
と言う。