禁断のプロポーズ
「なんの話だったんだ」

 そう問われ、未咲は風呂の中に口まで沈んだ。

 話したくなかったからだ。

「反抗か」

「……言ったら、夏目さん、私を嫌いになります」

「……がぼがぼとしか聞こえないが」

 おっと、まだ水の中だった、と思いながら、未咲は風呂から顔を出した。

「言ったら、夏目さん、私のことを嫌いになります」

「予言か?」
と夏目はその言葉を鼻で笑う。

「言ってしまって、一緒に居られなくなるのも嫌だし、夏目さんに嫌われるのも嫌です。

 でも、……もうこれ以上、黙っているのも」

 そう言い、未咲は、また風呂に顔をつけた。

 泣いているのを見られるのが嫌だったからだ。

 しばらくして、夏目が、

「息が長いな」
と溜息をつき、言う。

 それからすぐに未咲は顔を上げた。

 話す決意が出来たわけではなく、苦しくなったからだ。

 さっきまでシリアスに語っていたことも吹き飛ぶほど、間抜けに咳き込んでいると、夏目が笑い出す。

「お前は本当に飽きないな」
と。

 その顔を見、今は本当にこの人が好きだと思った。

 だからこそ、もう黙っていることは出来ない。

 未咲は風呂の縁を握って、叫んだ。

「夏目さんと私は兄妹なんですっ」
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