禁断のプロポーズ
「気にしなきゃいい。

 誰も知らないんだから、そんなこと」

「いやあの、専務が知ってますけど」

「じゃあ、広瀬を殺そう」

 ジョークなんだろうが、言い方が軽すぎて、逆に本気に聞こえる、と思っていた。

 なんだか一人で悩んでいたのが、莫迦らしいことのように思えてきた。

 一人より二人だな、と思う。

 いや、こんなときにその言葉が相応しいかはわからないが。

 つい、軽くなった気持ちのまま、
「殺し屋になら、心当たりがありますが」
と言ってしまう。

 察しのいい夏目が言った。

「……お前が匿った腹に傷を負った男か」

「じ、実は、そうなんです。
 銃で撃たれてました」

 莫迦か、と吐き捨てるように言われる。

「しばらく匿っただけですよ」

「そんな男と一緒に居て、本当になにもされなかったのか?」

「跳ね除けたって言ったじゃないですか」

「殺し屋が跳ね除けたくらいで怯むのか」

「夏目さん、殺し屋に偏見がありますよ」

「……普通、あるだろう。

 その男、傷が癒えて出て行ってからは会ってないんだな?」

「はい……」

「本当か?」

 見下ろす夏目に、軍人に尋問を受けている気分になる。

「ほ、本当です。
 一人では会っていません」

「一人では?」
< 267 / 433 >

この作品をシェア

pagetop