禁断のプロポーズ
 夏目が口づけてきた。

「ひとつ、根拠がある」

「え?」

「広瀬がお前に、お前が会長の孫かもしれないと教えたことだ。

 あいつは、自分のライバルが増えるのを嫌がっているから。

 お前が確実に会長の孫なら、言わない気がするんだ」

「教えられたところで、私はただの秘書ですから。

 あ、でも、だから、私が会社に入れたのは、自分の口添えのせいじゃないかもしれないと智……専務は言ってました」

「会長がお前の資質を見極めるために、秘書室に入れたってことか。

 変に一般社員として入れるより、秘書なら、最初から、役員の仕事を間近に見て学べるしな」

「でもまあ、専務が実はいい人だって可能性もあります。

 私たちが兄妹だってことを教えないでいたら、可哀想だって思ったとか」

「教える方が可哀想だろうが。

 自分の良心の呵責に耐えかねたんだろ、それかーー」

 それか? と問うと、夏目は、なんでもない、と言った。

「あのー、身体冷えてきたんですけど」

 それ以上言いそうにない夏目にそう訴えると、そのまま浴槽に投げ捨てられる。

「もうっ。
 いまいち優しくないんだから。

 お兄ちゃんかもしれないからですか?」
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