禁断のプロポーズ
 



 カップ麺の匂いってのは、どうしてこう、後を引くんだろうな。

 未咲が帰ったあと、彼女の雑な片付けでは気になる智久は、台所と食卓台を始末し直していた。

 未咲はそろそろ夏目に言っただろうか。

 夏目と未咲が兄妹であるという、絶対、確実な証拠というものはない。

 だけど、あのとき、感じたのだ。

 自分が会長に未咲の就職を頼んだとき、会長は彼女の履歴書と写真を見て、少し考えたあとで笑って了承した。

 あまり見ない会長の顔だった。

 未咲に言われるがまま、就職を頼んでやったのは、確かめてみたかったというのもある。

 彼女が本当に会長の娘かどうか。

 彼女は母親にも似ているが、会長にも似ている。

 現社長の息子は後を継ぐ気はなく、うちの会社にも就職していない。

 だから、こんな後継ぎ騒ぎが起きたのだ。

 社長の甥である自分なら、血縁的にも、仕事の能力的にも問題ないと思われていた。

 今はまだ若すぎるが、もちろん、今すぐ継ぐわけではない。

 後継者に決まったら、そこから時間をかけて、社長や会長の仕事を見て習い、引き継ぐことになるので、特に問題はないはずだった。

 だが、そこに、あの遠崎夏目が隠し子だという話が舞い込んできた。

 他は雑魚だが、あいつはまずい。
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