禁断のプロポーズ
 考えるのも面倒くさかったので、夏目に合わせて、料理はコースで頼んだ。

 食前酒を呑んだあと、夏目が言った。

「で?
 俺になんの用だ」

「用があるなんて、言いましたっけ?」

「結婚したいと言っただろう」

 どうもこの人は、言葉を額面通りに受け取れない人のようだった。

 ま、実際、その読み通りなのだが。

 あのとき、プロポーズを受けたような返事をしたのは、こうして、会っていても、おかしくない状況を作ってくれるためのようだった。

 自分が誰なのかもわかっているのだろう。

 江戸切子のグラスを置いた未咲は、夏目を見つめて言った。

「遠崎課長、お訊きしたいことがあります。

 課長、おねえちゃんを殺しましたか?」

 夏目は一瞬、沈黙する。

「……殺してはないな」

「……ですよね。

 すみません。
 言い間違いました。

 ちょっと勢い余っちゃって」
と言うと、溜息をつき、

「お前はいつも勢い余ってるな」
と言う。

「おねえちゃんは同期の貴方と仲良かったみたいで、何度も日記に名前が出てきていました」

「日記があるのか」
と夏目が言ったところで、また、料理が運ばれてきた。
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