禁断のプロポーズ
「やだ。
 夏目ちゃんの奥さんじゃない」

「夏目ちゃん、いつ、結婚したの?」

「式はこれからするのよねー」
とおばちゃんがこちらを向いて言ってくる。

 いつだったか、庭に水を撒いているときに挨拶されて、仕事の行き帰りにも普通に挨拶していたら、いつの間にか、籍だけ入っているが、まだ、式をしていない夫婦だと思われたようだった。

「あらー、私も式に出たいわー。
 最近、結婚式行ってなくってねえ」

「あんた、なに言ってんの。

 でもさあ、未咲ちゃん、此処から着替えて、お披露目して出てよ」

「昔は、みんな、そうだったわよねー」
とおばさんたちの話は脱線していく。

 いや、泥棒はどうした、と思ったのだが、まあ、警察と夏目に訊く方が早いだろう、と思い、
「じゃあ、近くで式をするようになりましたら、ぜひ」
と言って頭を下げ、玄関へと向かう。

 近くで式を、か。

 堂々と挙げられるような状況になるのなら、何処でもいいんだけど、と思いながら。

「夏目さんっ」
と呼びかけると、警察官と話していた夏目が振り返った。

「こちらの方が、一緒にお住まいになられている方ですか?」

 警官は既に家族構成を聞いていたらしく、そう問うてくる。

 だが、まだ、警察も到着して、そう経ってはいない感じだった。
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