禁断のプロポーズ
警察も撤収し、集まっていた近所の人たちに、
「どうもお騒がせしまして」
と二人で頭を下げた。
「大丈夫?
なにか足りないものがあったら言って」
とおばちゃんたちは、鍋釜、コンロなどの生活必需品を貸してくれようとする。
いや、さすがにそんなものは盗られてないんで、と思ったが、その気持ちがありがたかった。
「さっき言ってたんだけど、夏目ちゃん。
古臭い話かもしれないけど。
もし、近場で式をやるのなら、花嫁衣裳、お披露目して出て行ってよ。
みんな、楽しみにしてるんだから、結婚式」
とおばちゃんたちが軽く笑って、夏目の肩を叩く。
なんだか泣きそうになった。
このおばちゃんたちに、花嫁衣裳を見せてあげたいな、と思ったのだが、自分と夏目が結婚できるかはわからないからだ。
自分のことをよく知らなかったおばちゃんが、他のおばちゃんに、いろいろ突っ込んで訊きながら帰っていく。
みんなが、はいはい、わかったわかった、うるさい、と言っているのが風に乗って聞こえてきて、つい、笑ってしまう。
「見せてあげたいなあ。
海外に逃亡する前に、此処で白無垢着ようかな」
「じゃあ、そのまま、飛行機に乗れよ」
と夏目は言う。
「私、飛行機苦手なんですよ」
「お前、どうやって海外にいくつもりだったんだ」
「……え。
船?
いいじゃないですか、逃亡っぽくって」