禁断のプロポーズ
 もう仕事は終わっているらしく、灰原たちは部屋の中央に集まって、お菓子を食べていた。

 どうやら、結婚退職した先輩が、お菓子を持って訪ねてきたらしく、それをみんなで分けているようだった。

 そういえば、桜が、そうやって、退職後の愚痴を言いに来る人たちが居るとか言っていた。

 チャーンス。

 そっと身を屈めて己のデスクに近づく。

 引き出しをどうやって音立てずに開けようかな、と思ったとき、灰原たちの話が耳に入ってきた。

「そうなんだ。
 佐藤さん、やめるんだ?

 まあ、此処に長く居てもね。

 若くなくなったら、用なしな感じあるしね」
と寂しい話をしている。

 華やかな愛人課のそれが現実か、と思った。

 っていうか、私、盗み聞きしてるみたいになってるんだけど。

「なんか……上役の誰かと揉めたからって聞きましたけど」

 未咲と同期の清水が恐る恐るという感じで聞いている。

「ああ……」
と投げやりに灰原が答えた。
< 388 / 433 >

この作品をシェア

pagetop