禁断のプロポーズ
「普通、女の子なら、僕が君が夏目を見てたって言ったところで。

 あら、この人、なんでそんな私をずっと見てたのかしらって思わないかな?」

 そう言いながら、胸まである髪の先に触れてくる。

「思いません」

「なんで?」

「水沢さんは、そうやって、一人一人を監視してるんだと思います」

「へえ。
 どうして?」

「水沢さんが、『優秀で切れ者』だからじゃないんですか?」

「棒読みだね」
と言う克己は、何処か面白がってる風だった。

「確かに。
 新人を一人ずつチェックするのも僕の仕事。

 でもさ、君が特に目を惹いたのは確かだよ。

 美人だからじゃない。

 ……その顔だからね」

 じゃあ、とこちらがなにか言うのを塞ぐように、克己は手を挙げて行ってしまう。

 やはり、油断ならない。

 だが、油断ならない部分をわざと見せてくれると言うことは、少しは腹を割って話す気があると言うことなのか。

「新人っ」
といきなり、背後から呼びつけられて、はいっ、と反射で返事をする。

 いつの間にか、長い廊下の後方に、先輩秘書たちが居た。

「あんた、今度はなに、水沢さんとコソコソ話してるのよっ」

「いやあのー、コソコソって」

 堂々と廊下の真ん中で話してましたけど、とか言ったら、火に油を注ぎそうなので、黙っていた。
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