禁断のプロポーズ
ぎしり、ぎしり、と古い床が軋む音がして、未咲は目を覚ました。
雨が降っていたと思ったが、それは夢だったようだった。
背の曲がった影が縁側を歩くのが障子越しに見えた。
未咲は布団を口許まで引き上げ、呼吸さえも、外にもれないようにする。
目を閉じると、薄く障子の開く音がした。
こちらが眠っているのを確認したあとで、少し引っかかりながら、障子を開ける音がする。
そのまま、その人影は室内に入ってきた。
あまり息を殺しすぎても、寝てると思われないかもしれないと、出来るだけ、普通に呼吸するよう心がけるが、難しい。
その人物は、布団を敷くために、隅に寄せている机の側まで行ったようだった。
そこには未咲の荷物がある。
ゆっくりとファスナーを開ける音がし始めた。
ボストンバッグのファスナーだろう。
未咲は起き上がり、声をかけた。
「その中には着替えしかないですよ、遠崎課長」
月明かりにぼんやりと見える、男の背が振り返る。
「なにしに来たんですか」
夏目は少し考え、
「……夜這いかな」
と言った。
未咲はひとつ溜息をつき、立ち上がると、電気をつけた。
眩しそうに夏目が目をしばたたかせる。