禁断のプロポーズ
「どうぞ、毒は入っていません」
そう言いながら、未咲は夏目にお茶を出した。
また荷物を漁られても困るので、夏目を居間に連れ出していた。
「夕べの足音も課長だったんですね。
あのときは、中には入って来なかったようですが」
「迷ったんだ」
と夏目は言う。
「さすがに勝手に荷物を開けるのはどうかなと思って」
「私が仕事に行ってる間にやればよかったのに」
と言うと、
「持ち出しているかもしれないし。
お前の方が早く帰っているしな」
と言った。
あまり悪びれた様子もない彼に訊く。
「一体、なにを探してたんですか」
「なんだと思う?」
「日記ですかね。
それと、私の身許を証明するもの」
その通りだ、と夏目は言う。
未咲は指を、一と立てながら説明した。
「まず、日記ですが、取られたって言いませんでしたっけ?」
「そこにあるものならあると証明できるが、取られたというものが、本当に取られたのかはわからないじゃないか」
「……なるほど」
そう言ったあとで、二、と指を立てて、言ってみる。
「疑わなくとも、あれほどの大企業に怪しい身許の人間は入れないと思うんですが」
これにはすぐさま、答えがあった。
「だが、お前はまともなルートで入社していない」