禁断のプロポーズ
「お前が眠そうだったんで、連れてきて。

 そのまま、寝顔が可愛いなと思って、見てたら、寝てしまったんだ。

 それだけだ」

「そ、そうですか。
 それはまた、ご迷惑をおかけして」

「信じるな」

「もうっ。
 なにが本当で、なにが嘘なんですか、もう〜っ」
と言いはしたが、そう眠りが深い方ではないので、夏目がなにもしていないというのは、本当だろうと思っていた。

 夏目のことは嫌いではないが、好きかどうかはわからないし。

 知らない間に、なにもかも終わっているというのも、どうも、と思っていた。

「そういえば、お前、俺が昨日も此処に来たと言っていたな」

「ええ。
 でも、廊下をひたひたと歩いてただけですが」

「ひたひたね。
 その足音は此処で止まったのか?」

「いえ。
 確か、行ったり来たりしてましたよ」

「じゃあ、それは俺じゃないな」

「えっ」

「やっぱり、それは、ばあちゃんだろう」
と夏目は言う。

「お前の話を聞いたとき、ちょっとおかしいな、と思ったんだ。

 俺は、此処を行ったり来たりはしていないし。

 幾ら足音を抑えても、俺の体重じゃ、どうしても、床が軋む」

 そういえば、昨夜も軋む音がした。

「そんなに体重ありそうにないですが、やっぱり、男の人は違うんですね」
と言うと、

「お前、男に乗られたことがないんだろう」
と言い出した。
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