冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
低くたれ込めた鉛色の空からは、いつ雪が落ちてきても
おかしくない気がした。
その浮浪者は、今日も寒い街角の片隅にうずくまっていたが、
目の前に止まった馬車からおりたったリューリを見て
目を見開きながら言った。
「ヒュー、こりゃあ、女神様が神の国からお迎えにござったわ。」
「無礼であるぞ。」
ついてきた若い武官が、浮浪者を無理に跪かせようとしたのを
リューリはやめさせ、浮浪者にむかって微笑みかけた。
「私は女神ではありません。
あなたが聞いたジェイド.マン達の会話のことで訊ねたいことが
あるの。」
「なんだねぇ 女神様。」
「会話の中に ”オブルイム”という言葉はなかったかしら。」
「うーん、そういやぁ そんなこと言っとなぁ。」
「なんですか? そのオブルイムとは?」
若い武官が、口をはさんだ。
「古いオニギス語です。昔、オニギスの商人達は古いオニギス語を
暗号のようにして使っていたと聞いています。
きっとジェイド.マン達も同じようにしているのでしょう。」
そう言って、リューリは根気よく、浮浪者から言葉を聞き出していった。