能あるイケメンは羽目を外す
逃げるようにバスルームに駆け込み、鏡を見る。

憔悴しきった生気のない顔。

今日ずっとつけていた母の形見の真珠のイヤリングを外して、洗面台の上にそっと置く。
「……お母さん、ごめん。結婚式、駄目になっちゃった」

イヤリングを見てると目頭が熱くなる。

死んだ母を安心させてあげたかったのにな。

自分なりに一人で一生懸命やって来たんだけど、全てが空回りするだけ。もう限界かもしれない。

「一人で頑張るの……辛くなっちゃった」

服を脱いでシャワーブースの中でシャワーを浴びると、嗚咽が込み上げてきて私は声を上げて泣いた。

人前では泣けなかった。泣ける場所がなかった。

ここなら泣いても誰にも見られないし、誰にも気づかれない。

どれくらい泣いていたのだろう。

少し落ち着くと私はシャワーブースを出て、バスローブを身に纏った。髪も乾かさずにバスルームを出て彼の姿を探す。
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