能あるイケメンは羽目を外す
こいつにとっては最悪の脅し文句だろう。

玲司は俺にとってただの秘書ではない。

父から俺のお目付け役を命じられている。俺が出社しなければ、お小言を食らうのは杉原だ。

「俺にちゃんと仕事をさせたいなら、杉原も俺の頼みは聞いてよね」

俺の言葉に杉原がチッと舌打ちする。

他の奴の前では絶対にそんな事はしないのに、こいつは俺の前ではたまに本性をさらす。

舌打ちするくらいなら、敬語なんて止めればいいものを。

形だけ敬われても……俺にとっては迷惑なだけだ。

杉原の顔を見るだけでイライラする。

『わかりました。三十分後に迎えに行きます。逃げないで下さいよ』

感情を抑えた声で杉原が俺に釘を刺すが、どこか自信あり気な感じがする。

ひょっとして……楓の事を知っているとか?

「ああ」

フッと笑って通話を終わらせると、俺はシャワーを浴びにバスルームへ向かう。
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