Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 こんな時、みのりは、分からないことは先輩に訊いたりすればいい…と教えてくれていた。芳野高校の先輩もいるのかもしれない。しかし、その存在自体を把握していないので知り合うことさえできない。
 付属高校から上がってきているわけでもなく、同じ高校から来ている同級生もいない遼太郎には、まだ友達というものがいなかった。


 心が枯れている遼太郎は、友達なんてどうでもいいと思っていた――。
 だが、やはりこういう時、確認し合い相談し合う仲間の必要性を感じ始めていた。


 大学の構内は緑が多く、本当にここが東京の都心だということを忘れてしまうほどだ。遼太郎の通う環境学部は、大学が持ついくつかのキャンパスの中でも一番大きなところで、大学付属の図書館なども同じ敷地内にある。


 緑の葉を茂らせる木々の下、芝生の広場に面したベンチに座って、遼太郎は先ほど売店で買ってきたパンを取り出した。
 本当はこんなパンくらいでは、おやつにもならないのだが、ごった返している大学生協で一人のランチをする気にもならず、こうやってとりあえず空腹をごまかすことにした。


 パンを食べながら、講義の要覧を取り出して、遼太郎はそれぞれの講義の内容を確認する。
 1年生はまだ一般教養が中心で、特に前期は専門の講義は全く入っていないらしい。でも、一般教養と言っても、すべてを取るわけではなく、各分野から自分で選択できるものもあるらしい。


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