Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 さらに、樫原のこの助言に、遼太郎はピクリと反応する。


「……え。そうなんだ。知らなかったよ。」


「それじゃ、どれでも適当に、自分の好きな科目を取ってるの?ちょっと時間割見せてみて。」


 そう言われて、遼太郎はバッグの中からクリアファイルに挟みこまれた時間割を取り出す。
 それを見せると、樫原はその時間割の問題点を指摘してくれた。もう一度要覧を見直して、かなり時間割を変更させた。そうすると…、結果的には、学部が同じ樫原とは、ほとんど同じ時間割となってしまった。


「次の講義は英語で選択科目じゃないから、最初から一緒のはずだよね。」


 そう言って笑いかけられても、遼太郎は笑顔を作るどころか、助言をしてくれたお礼さえも言えなかった。

 それほど、樫原の最初の一言が効いていた。


 人の好みは、その人それぞれだ。世の中にはいろんな恋愛のかたちがあって、同性の方が好きという人がいるということも知っているし、そんな人の存在を遼太郎だって否定しない。


 けれども、自分がその相手になるのは、話が別だ。
 遼太郎は、あれほど密接に生活を共にしていた二俣の、筋骨隆々な体躯を見て、一度だってゾクゾクしたことはない。


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