Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 落ち合う場所は、高台にあって眺望が開けたカフェ。白を基調としたすっきりとした印象のこのカフェは、例の酒造メーカーの社長、御堂さんの夫人が経営しているものだった。

 カジュアルなお見合いを…ということで、両親などは伴わず、みのりは一人で自動車に乗りこのカフェに訪れた。何度か顔を合わせたことのある御堂夫人は、カフェの外にまで出て、快くみのりを迎え入れてくれる。


「まあ、みのりさん。お写真よりもずいぶんお綺麗になられて、見違えました!」


と、歯の浮くような言葉を捧げてくれるが、どこまでが本当でどこまでがお世辞なのかよく分からない。

 けれども、この日のみのりは、喜美代とデパートの店員が選んでくれた清楚で男性受けしそうな洋服に身を包み、いつもよりもしっかりとメイクを施して、誰が見てもハッとするように綺麗だった。


 見晴らしのいい窓辺の席へと案内されると、そこにはすでに町長の息子が待っていた。出されている紅茶がずいぶん減っているので、かなり前に到着していたらしい。

 御堂夫人に連れられてきたみのりが、自分の見合い相手だと気が付くと、スッと立ち上がり、丁寧に頭を下げてくれた。
 釣られて、みのりも同じようにお辞儀をする。顔を上げるとパチッと目が合い、その瞬間、町長の息子は眼鏡をかけた顔でニコリと柔らかい笑みを作った。

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