Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「みのりさん。こちら、蓮見桂一さん。町長さんのご長男だということは、ご存じよね?」

「はい。」


 御堂夫人が紹介してくれたのを受けて、みのりはただ短く答えた。


「桂一さん。こちらは仲松みのりさん。日岡の智徳寺のお嬢さんよ。」


 同じようにみのりが紹介されると、蓮見は柔らかい笑顔のまま目を伏せて、軽い会釈をした。

 スラリと長身で、清潔感漂う洗練された感じのイケメンだ。それこそ、お見合い写真で見たよりも、ずっと。


 それからカフェの一角で、御堂夫人も一緒に、少し話をすることになった。カフェは通常営業しているので、他にもお客さんはいるのだが、従業員がそれに対応している。

 御堂夫人は、こういうことに慣れているのだろう。初対面で会話が弾まないだろう二人の間に入って、身の上話をうまく引き出してくれる。


 みのりが大学院を出た後、1年ほど県立史料館に勤め、数年の講師期間を経てから正式採用されて芳野高校で教員をしていることや、現在の仕事の内容や生活のことなど。御堂夫人から質問されることに答えるうちに、みのりは知らず知らずに話してしまっていた。

 会話をする中で、蓮見のこともいろいろと知ることが出来た。慶応大学を出てから、地元の県民新聞社に就職したこと。社会部や政治部の記者として、東京や大阪の支社にも勤務し、昨年地元に戻って、会社の近くに独り暮らししていることなど。


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