Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
急きょ決まったこのお見合いに合わせて、この店が使えるなんて、蓮見はどんなコネを使ったのだろう……?
そんなみのりの思惑をよそに、蓮見はにこやかにみのりを迎えて、背中を押すように、先に店内へと入れてくれた。
眼下にまばゆい夜景が、夕闇の中に浮かび上がっている。街の灯りの向こうには、光に縁どられた湾が見渡せ、みのりは思わずその光景に見入ってしまった。
ガラス張りの窓から、それが一望できる特等席に案内されて、二人は腰を落ち着けた。
「せっかくだからワインでも飲みたいところですが、僕もみのりさんも運転しなきゃいけないので残念ですね。」
メニューに目を落とす間、蓮見からそう話しかけられる。
そう言われても、初対面の人間の前で、みのりには酔っぱらう勇気などない。ましてや、身構えてガチガチになっている今のような状態で、『飲みたい』なんて思えるはずもない。
「…ワインを楽しむのは、またの機会にしましょうか。」
――えっ?!またの機会?
みのりの意識が、その言葉に引っかかる。
蓮見は、再びこうやって一緒に食事をする機会があることを、期待しているのだろうか……。