Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
みのりには、少なからずためらいがあった。蓮見が食べかけている皿に、自分の使っていたフォークを入れるなんて。こんなことは、付き合っている者同士や特に親しい者同士じゃないとしないことだと思った。
でも、こんな些細なことを拒むのも大人げない。みのりはそっとチーズが絡んだペンネを一口二口、口へと運んだが、意味もなく緊張して味はほとんど感じなかった。
「僕はオイルパスタはあまり好きじゃなかったんですが、みのりさんが頼んだこれは美味しいですね。蟹とキャベツの味がよく合ってるし、オイルなのにすごくクリーミーで、それにこの味、カラスミが入ってます?この黄色いのがそうかな?」
逆に蓮見の方は、みのりのパスタを堪能したらしく、しっかりと噛みしめながら味の分析をしている。これだけ自分の舌で味の観察が出来るということは、それだけいろんなものを食べた経験があるということだ。
「蓮見さん、グルメ雑誌の記者さんもできそうですね。そんなに気に入ったのでしたら、残りもすべて召し上がってください。」
「…え。……いや。」
みのりが蓮見の様子を見てそう言いながら、微笑みを向けると、途端に蓮見は赤面してうろたえた。