Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「みのりさんは、さすがに教員をなさってるだけあって、その辺はしっかり男女同権なんですね。女性の中には、男性に出してもらって当然という感じの人もいますから。」
蓮見のこの発言の裏にあるこれまでの女性関係やそれに伴う女性観を、掘り下げたい気持ちが、みのりの中に頭を擡(もた)げる。でも、もう今日のこれきりで会うこともない相手のことを詮索しても仕方がない。みのりは軽く受け流すことにした。
蓮見の車に乗り込み、あと少しで解放される…と、自分を奮い立たせる。
もちろん蓮見に罪もないし、嫌ってもいない。結婚するには申し分のない相手だと、却って思うくらいだ。
でも、今は誰とも…結婚とか付き合うとかそういうことで、関わり合いを持ちたくなかった。遼太郎を失って不安定で張りつめている自分の心に、これ以上負荷をかけてしまっては、ガラスのように砕け散ってしまいそうだった。
「さっきは僕の方がたくさん、みのりさんに質問してしまいましたが、みのりさんは何か僕に訊きたい事とかありませんか?」
運転している蓮見から、不意に尋ねられる。
みのりは、反射的に「何もない」と答えようと思ったが、蓮見を見た瞬間から潜在していた疑問が口を衝いて出てきていた。