Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「どうして…、蓮見さんはお見合いをしようと思ったのですか?蓮見さんならこんなことをしなくても、お相手の女性には不自由しないと思うのですが…。」
核心を衝くようなみのりの質問に、蓮見は息を呑んで、運転中にもかかわらず、眼鏡のレンズ越しにみのりを凝視した。それから、気が付いたように前に向き直り、言葉を選び兼ねて口を開いても何も発することなく黙っている。
そして、ようやく意を決したように、蓮見が応えた。
「あの…、少し外を歩きながら話をしてもいいですか…?」
自分がした質問に対しての答えがこれだから、みのりも嫌とは言えず同意した。
蓮見は、どこか適当な場所の当てがあったらしく、車の進路を御堂夫人のカフェ方面から変えて、海辺の方へと向かった。
車が停車したのは、砂浜に面した駐車場。
夏は多くの海水浴客でにぎわうところだが、春の夜には誰も人影はなかった。
青い月明かりの中に浮かび上がる、目の前の湾の波は穏やかで、隣町のまばゆい夜景をその水面に映している。カップルがデートをするのには絶好の場所だ。
目に映える光景はとても美しく、その美しさに感動する分、みのりは自分自身の心に存在する影が濃くなってくるように感じた。