Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「波打ち際まで行ってみましょうか。気持ちいいですよ。」
そう蓮見に誘われて、車の外に出て砂浜への階段を下りる。蓮見はみのりの先を歩き、もうすでに砂浜の中ほどまで行ってしまっていた。
みのりが砂地に足をおろし、歩き始めた瞬間、
「キャ……ッ!!」
砂に足を取られてひっくり返ってしまった。しかも、仰向けに背中まで砂地に付けて。
虚勢を張るために、ドジをしないよう気を付けていたつもりだったが、この一瞬は忘れてしまっていた。
みのりの声に気が付いた蓮見が、驚いて駆け寄り、
「大丈夫ですか?」
と、手をみのりへと差し出した。
本当は蓮見の手など借りたくはなかったが、助けがなければ立ち上がれそうもなく、みのりはしょうがなく蓮見の手を取った。
極まりが悪く恥ずかしさのあまり、お礼の言葉さえ形にならない。
「みのりさんの靴だと、砂浜を歩くのは無理でしたね。…すみません。」
みのりがお礼を言うよりも先に、蓮見の方から謝られる。
蓮見の言う通り、みのりも普段も履くことがない、高さのあるピンヒールのパンプスは、砂浜を歩くのには適さなかった。