Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 先ほどとは立場が逆になって、愛がみのりを心配そうに見守ってくれている。


「……でも、そんなふうに泣くなんて、その人とは……?」


 鋭い洞察は、兄の二俣と同様だ。涙の発作が少し納まったみのりは、涙を拭いながら緩く首を横に振った。


「…そうなんだ……。片想いなの?みのりちゃんなら、両想いになれそうなのに……。」


 愛の中にある幼い恋愛観からすると、当然の疑問だろう。みのりは目を伏せたまま、もう一度首を振った。奥歯を噛みしめて、鼻から深く息を吸う。

 気持ちを張りつめていないと、再び涙が溢れてきて自分でも精神を制御できなくなりそうだった。


「片想いじゃなかったけど…、いろいろあって私の方から別れようって言ったの……」

「えっ……!そんなに泣くほど好きなのに、どうして…?」


 愛のこの問いに、みのりはただ寂しく微笑むだけで答えなかった。形作られただけの笑顔の上に、瞳にたたえられていた涙が、また一筋落ちた。


「相談に乗ってあげてる方が泣いたりして、ビックリしたよね?でも、大丈夫。私のことは、心配しないで。…だけど、このことは内緒にしててね……生徒だけじゃなく、愛ちゃんのお兄ちゃんにも。」


 涙を押さえながら、みのりがそう言って気を取り直すと、愛はただ一つ、「分かった」というように頷いた。


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