Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
もし、宇津木が愛にフラれているのなら、花園予選敗退とのダブルパンチで、きっと落ち込んでいることと思う。
3年生の教室で宇津木を見かけても、そんな大胆なことをするような男の子には見えず、〝恋〟がもたらす化学変化のようなものを、改めて不思議だと思った。
人を好きになると思ってもみない力が湧いて出て、思ってもみない行動に出ることもある。
……みのりも、そんな風に遼太郎を恋い慕う気持ちを、自分の生きていく力へと転化したいとは思う……。
でも、彼が心に過るだけで痛みに侵される、今のような状態では、それは難しかった。力にするどころか、自分の中のすべてのものが止まってしまう。
遼太郎は、成長を見守り、愛おしんで育てた存在。いつも側で、みのりを大切に守ってくれていた存在。彼はすでにみのりの一部となり、その命よりも大切な存在になっていた。
その存在を失ったのだから……。今のみのりは、命のない抜け殻のようなものだった。
校舎と校舎の合間に植えられているアメリカンフーの真っ赤な紅葉が、木枯らしに吹かれて散っていく。
深まった秋の午後の優しい光の中で、紅い木の葉が舞っている目を奪われるような光景も、みのりの目には映っていなかった。