Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「校内だったら、こんなに大騒ぎしないでしょ。うちの学校、ハイスクールパワーアップ事業の指定校になってるから、教育委員の先生たちはもちろん、県下の各高校の英語科主任やその他もろもろの先生たちが集まるらしいよ。」
「えっ……!?それじゃ、野上先生がその先生たちの前で授業をするの?」
そう、みのりが驚いた顔を見せると、古庄はいっそう屈託なく笑った。
「そうそう。だから、野上先生。朝からすっげー緊張してて…ガチガチになってんの。」
2年部とはいえ蚊帳の外の古庄は、ただ単に面白がってるみたいだ。
みのりも笑いをもらしながら納得した息を吐き、会話もこれで終わって席に戻ろうとしたところ、
「あっ、仲松ねえさん。」
と、古庄に呼び止められた。
「なに?」
「えっ、コーヒー淹れるんじゃないの?」
「は……?」
古庄がみのりを見つめて、ニコッと笑う。
3年部にあるみのりの机には、たくさんの仕事が積み重なっていたが、その罪のない笑顔に折れて、みのりはため息を吐いた。
――コーヒーくらい、自分で淹れればいいじゃないの…。
と、思いながら食器棚からコーヒーポットやサーバーを取り出し、準備をする。
それでも、手慣れた感じでみのりがコーヒーを淹れはじめると、深く芳しい香りが辺りに漂った。